Dark Castle

Original Macintosh version
 Adobeが版権を持っていたゲーム
 Dark CastleはもともとSilicon Beach Softwareが開発した初期のMacintosh用のアクションゲームで、ありていに言ってしまえばファミコン版ドラゴンズレアのような死にゲーなのですが、キーで移動しながらマウスで射撃方向を操作するという独特かつ難解な操作方法や、特定の日付にプレイするとゲームに変化が生ずるなど、当時としては珍しいほどの遊び心が盛り込まれた作品でもあります。ゲームそのものの完成度というよりは、その特殊な立ち位置でカルト的な人気を博していました。しかし、それ以上にこの作品は、あのAdobeが珍しく版権を所持していたゲームとして有名であり、それにまつわるエピソードは大変興味深いものとなっています。
 Silicon Beach Softwareはゲーム以外に(その筋にはAirborne!が有名でしょうか)SuperPaintやSuper 3Dといった画像処理ソフトウェアも開発していました。1990年にAldus Corporation(AfterEffectsやPageMakerを開発していたデベロッパーで、当時はDTPソフトウェアの大手でした)にSilicon Beachが買収されると、Dark Castleのシリーズも終了かと思われたのです。実際のところ、Dark Castleはごく初期のMacintoshでしか動作しなかったし、他プラットフォームへの移植版もそれほどヒットしたわけではなかったので、このまま忘れ去られていくはずでした。
 1994年にAldusがAdobeに買収され、同時にDark Castleの版権もAdobeに移動します。AldusにしてもAdobeにしてもゲームの開発にはあまり興味がないようでしたが、低価格の画像処理ソフトウェアColor Mac Cheeseを開発していたゲームデベロッパーのDelta Tao SoftwareがColor Mac Cheeseのソースコードと引き換えにDark CastleのソースコードをAdobeから獲得すると、1998年にリメイク版であるColor Dark Castleが発売されました。1998年、Adobeは既に業界の巨人となっていたので、冷静に考えてみると凄い話です。AdobeがいくらDark Castleの価値を低く見積もっていたとしても、当時のColor Mac CheeseにはAdobeと交渉できるだけの価値があったということですね。そして、それだけのソフトウェアを懐かしゲームのリメイクのために実質売却してしまうDelta Taoの熱意にも脱帽したものでした。
 そんな変わった運命をたどったDark Castleですが、もっと不思議なのは3作目にあたるReturn To Dark Castleが無事に発売されたという事実でしょう。有名なヴェーパーウェア(告知や広告は行われたものの、いつまでたっても発売されないソフトウェア)だったPreyやTeam Fortress 2も顔負けの1996年開発スタート・2008年発売となっています。何故12年もかかってしまったのでしょうか……。
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