ミラー兄弟の教育ゲームについて

The Manhole、Cosmic Osmo and the Worlds Beyond The Mackerel、Spelunx and the Caves of Mr.Seudo
の教育ゲーム3作品

 マンホールはここ日本において妙に名前だけが売れている作品ですが、名前を知っていても実際に触れたことがあるという方はそれほど多くいらっしゃらないようです。それもそのはず、一連のミラー兄弟による教育ゲームはそれほどメジャーなプラットフォームにはリリースされていません。

 これらの作品に対する認識に「主観視点のポイント&クリックによるADV(このあたりはシエラ・タイプとも言うらしい。←ん? 本当か? シエラにはAdventure Game Interpreter[IBM開発らしい……]というエンジンがあった)で、なんだかわからないが名作らしい」というものがありました。大きく間違っているわけではありません。しかしながら、歯がゆいことにプレイしてみればわかるのですが、この認識はちょっとおかしいのです。

 まず、マンホールの全てのカード(視点の違いや、ふきだしの有り無し、アニメーション含む)を足しても精々300か400枚。持って30分です。当時はこれで良かったということですし、子供の感覚では無限の広さに感じられたものですが、オールタイムのクラシックとするにはちょっとあっさりしすぎているように思えます。また、シエラ系アドベンチャーという認識についてですが、ゲーム性は「皆無です」。ゴールなしは当然として、ミニゲームすらありません。ミラー兄弟自身も「後にゴールのあるゲームを作ろうとしたが、既にミラー=子供向けのイメージがあった」のようなことを語っているくらいなのですから、少なくともゲーム寄りではないことは明らかです。とは言え、マンホールが多くのフォロワーを生んだ作品であることは確かでしょう。

 ちなみに、よくマンホールに似ていると言われるセガの「スイッチ」ですが、「探索なし(ある意味、迷宮ではあるが……)」「基本的にアクションに脈絡なし(エレベーターやテレビのような例外はある)」「ゴール・ゲームオーバーあり」という点で大きく異なっており、比較対照としてあまり適切ではなさそうです。

 「あまりにも量がない」という身も蓋も無い弱点は続くCosmic Osmoで見事に解消されます。複数の惑星を探検するこの作品はマンホールのおよそ20倍程度のシーンが盛り込まれ、オープニングや複数のミニゲーム、隠し部屋をフィーチャーした楽しい作品となっていました。もし「シアン系アドベンチャー」というジャンルが存在するならば、その金字塔はCosmic Osmoでしょう。対象年齢も上がったのか、マンホールは不思議の国のアリスなど童話のパロディだったのに対し、Cosmic Osmoでは副題にもなっている宇宙に浮かぶ巨大なサバ(口の中に宇宙人が住んでいる)や、奇妙な登場人物が次々と登場し、少し毒々しくなっています。またアニメーションが大量に追加されたり、CD-Audioがついた同作品のCD-ROM版も発売されました(写真)。余談ですが、ゲーム中出てくるアーケードゲームの基盤? には短いが文法的に正しい(!)The Manholeの内容を示唆した日本語の文章がプリントされています。

Cosmic Osmo CD
Cosmic Osmo CD版の変な「Osmo」

 最後にSpelunxについてですが、MYSTまでのミラー兄弟の作品では珍しくDirector版が制作されています(ただし、彼らはDirectorを気に入らなかったようだ)。対象年齢を更に引き上げ、多くのパズルが盛り込まれたややゲーム寄りの作品だったものの、この作品を最後にミラー兄弟は教育ゲームを離れていきました。

 当時MYSTをプレイしてとてつもなくがっかりしたのをよく覚えています。インタビューによれば、彼らは「最初からゲームを作りたかった」として教育ゲームの実績を忌み嫌っていたようでした。しかし、MYSTはアドベンチャーとしてはあまりにも散文的で、ゲーム性という観点から見るとかなり、というより相当偏った内容です。これ以降のシアンの作品についてもほぼ同じような傾向ですが、私はあのMYSTぽいアブストラクトアドベンチャーがあまり好きではありません。

 2006年現在、アドベンチャーはあいも変わらず不況続きのマイナージャンル扱いですが、個人的には今一度シアン的な作品をプレイしてみたいと思っています。

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