Wizardry IV : Return Of Werdna

CRPG。

 有名なシリーズの中にあってビデオゲーム史に残る大迷作であり、ひときわ異彩を放つ作品。あくまでブラックジョークとして狙って作られたようで、マニュアルにも挑戦的な文字が踊っています。

 このゲームは従来のウィザードリィとは違い、初代の敵役であったワードナの視点でクリーチャーを操り復讐を果たすという内容が大変話題になりました。ゲームの画面構成もそれまでのものと同じで、冒険者のステータスは詳細に表示されても、味方は数しか表示されません。この時点でお気付きでしょうか? このゲームには壮大なブラックジョークとして作られたふしがあります。ゲームデザイン的に見ればこれ以上酷いゲームはほとんど存在しないと言ってもいいほどの酷さで(かなりの強運と、それに伴う反復作業が要求される。戦闘はたまに救済措置もあるが基本的に運である。また迷宮探索も実は相当運が絡むし、召還できる味方の数ですら運である)キチガイじみた難易度(M&M2の数十倍と言えばわかりますか?)も伴って、発売当時の評判はかなり悪かったようです。

 このゲームの素晴らしさはそのイカレタ謎解きの数々にあります。Wizardry未経験者は最初の2x2の部屋から出ることすらできないでしょう。また、わかっていても脱出には早くも運が絡みますので、少し時間を食われるかもしれません。迷宮のデザインが悪意以外何も感じられないのもセールスポイントで、地下9階の地獄のような扉の量(レベルを移動した瞬間に気の抜けた笑いが出るような)、地雷原、y軸に重力がかかる前衛的なトラップ、迷宮自体が回転する上に閉じ込められたり、市松状にダークゾーンが配置されていたり、迷宮の中にLv1の召還サークルがトラップとして配置されていたり、とにかく徹底しています。おまけにマロールも非常に不自由な作りになっており、解法がわかっていても途中で挫折しそうになることうけあい(これは誇張ではありません)。更には、いくつかの必須アイテムが壊れたり、アイテムが無いと即死する場所があったり、ヒント屋にクレジットカードで支払いを申し出るとたまに即死したり、屋根の上から落ちると即死したりと即死トラップも充実しています。おまけにマルチエンディングであり、真のエンディングをノーヒントで見るのはほぼ不可能かもわかりませんな。

 ウィザードリィといえば、比較的早期からシナリオを売りにしていること(Wiz3からシナリオ専門のスタッフを設けたらしいが)で知られていますが、このWiz4のシナリオはシュールな方向に凝りすぎて誰にも理解できません。宇宙に飛んだりはまだしませんが(Wiz6でついに破られましたね)、日本人にはわからないパロディや比喩表現、Zorkをネタにした謎解き、MRONやSoftalk誌といった内輪ネタと盛りだくさんで、メッセージの90%はジョークだが、その中からヒントを掘り出さないと進めない強烈な難易度が相俟ってこのゲーム(リドルも初期のM&Mを彷彿とさせるくらい難しい)を伝説の域に押し上げています。中でも一部機種のみで出現する隠し敵キャラである、スペイン宗教裁判の連中はあまりの唐突さに困惑させてくれること間違いありません。この手のジョークと宗教ネタは今作メインで制作を務めているRoe R. Adams三世の得意技ですが、半分くらいはサイケすぎて理解できないかもしれません。とは言え、リドル自体はリルガミンに入る合言葉を除いて英語が下手でもなんとか解けないことはないレベルです(そういった観点で見ると3 in Threeのようなゲームよりは遥かに楽)。

 なんだかひたすら皮肉を書いているようですが、実際のところ私はこの作品をかなり気に入っています。ここまでジョークを突き詰めたゲームは他に存在しませんし、精神的余裕を持ってプレイすればその意図と面白さがわかることでしょう。

 このゲームのApple][版は地獄のようなレスポンスの悪さを誇ります。おまけにセーブも終了時数箇所しか出来ないというありさまで、地下10階を脱出するのにも相当な気合と肩こりや眼精疲労の犠牲を伴いますから真のゲーマーGURUとなるつもりならば、Apple][版でGRAND MASTER ADVENTURERの称号を得てみてはいかがでしょうか? 当時のバージョンならオフィスの電話番号も表示されますし、格別の達成感が得られるかもしれませんが私には出来そうもありません。

 このゲームとは直接関係ありませんが、ゲーム開発者の履歴やプロフィールを追うにはMobyGamesがとても便利です(それだけのサイトではもちろんないが)。私はこのサイトでRoe R. Adams IIIがロードランナーチャンピオンシップのレベルデザインとして参加していた事を初めて知りました(Douglas E. Smithは知り合いを片っ端からロードランナーのレベルデザイナーに抜擢したらしい。本当かどうかは不明)。

Wiz4に関するどうでもいいトリビアのコーナー

・ かつてマニュアルにだけ記載されていた「VISAカード」がついにゲーム内でも言及されるようになってしまいました。それどころか今作には1938年映画のコピー(メディアは不明。日本語訳ではビデオとなっているが)、寿司の出前、モノポリー(のカード)までもが登場します。これって現代ものなのか? ちなみにニューエイジオブリルガミンのリメイクのみ自動販売機も登場。

・ ロン・ウォルトウ未記念プール(RON WARTOW NOT YET MEMORIAL POOL)のロン・ウォルトウとはプレイテスターにクレジットされているRobert Wartowのことだと思われる。海外のゲームライターにRonald Wartowという人物もいるが……(Ultima VにWartowという名で出演しているらしい)。

・ ゲームをクリアするとエンディングの種類を問わずパスコードが表示され、認定証を入手することができました。ところがこの認定証、最低でもナンバー10000以上は発行されているようで……難易度インフレの時代背景を省みても恐ろしい話です。けれども、もっと恐ろしいのはナンバーが6桁用意されているという事実でしょう。10万人はクリアするだろうという算段だったのか?

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